2014年1月13日月曜日

いのちがゴミになる瞬間

赤い車だったと思う。

これは以前住んでいたところでの話。


「キイィィイ!」

急ブレーキの独特の音がした。
私と妻は二階の窓から、
自宅に面した道路を覗き込む。

曲がり角を曲がって行く赤い車と



取り残された黒っぽい影と





赤い水たまり



猫だった。




二人で外に出てみると、
車の姿は既になく、
弱々しく横たわる猫だけが取り残されていた。


血を吐いていた。
口の周りが血で赤い。




だが、かすかに息がある。

「救急車…?…動物病院…!?保健所?」

こういう時、どうしたらいいのかわからなかった。


確か、まず通りに横たわる猫を自宅の庭に運んだような…

記憶が少し曖昧だが



猫は弱々しく、庭に運んだ際また血を吐いた。

保健所に電話しようということを話している間に、猫が震え始めた。



痙攣をおこしていた。


その時、
「ああ、もう助からないな…」
そう直感してしまった。

とにかく、保健所に電話をする。



幸い、電話は繋がり、話ができたのだが、


「保護は出来ますが、その猫の状態はどんな風でしょうか…」

ありのまま、「助かりそうもない」ことを伝えると






「生きている間は、私達(保健所)の担当なのですが、死んでしまうと…言いづらいですが、死体は「ゴミ」という扱いになりまして…市役所の清掃課の担当となってしまいます…」






衝撃だった。今まだかろうじて生きているこの『いのち』が、数時間経てば『ゴミ』として廃棄されてしまうという事実。



システムとしては、仕方ないことなのだろうなと理解はしつつ、何か言い尽くせぬ違和感を妻と共に感じた記憶がある。







その後私達は、ついに事きれてしまった猫の亡骸に手を合わせ、市の清掃課に連絡をした。

自宅前に置いておいてくれれば、回収しておくとの事だったので、ダンボールに亡骸をおさめて、通りから見える位置に置いておいた。



せめて、と思い線香に火を付けて、燃え移る心配のないところに置いた。





翌日、亡骸は回収されていた。



システムというのは、あるボーダーを決めて、その両側を

白か黒か

0か1か

定義することしか出来ない。

システムというのは常に冷酷とも言える冷静さをもって物事を切り分ける。


温かみのあるシステムというのは存在しなくて、それを使う人間に温かさが求められると思う。

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